ブーリン家の姉妹  監督 ジャスティン・チャドウィック

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舞台は16世紀イギリス。ヘンリー8世の治世に、国王の寵愛を受けたブーリン姉妹の、数奇な運命を描いた物語です。
ネタバレありますのでご注意下さい。
 
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賢く野心家の姉アン(ナタリー・ポートマン)と、優しく穏やかな妹メアリー(スカーレット・ヨハンソン)。姉妹には他に、弟のジョージ(ジム・スタージェス)がいます。

メアリーは、商人ウィリアム・ケアリー(ベネさん)との縁談があり、結婚します。
二人のダンスや初夜のシーンは素敵で、二人の唯一幸せな時期だったのだなあ…と。
国王(エリック・バナ)に見初められなければ、ずっと2人で幸せに暮らしていたことでしょう。
ダンスをするベネさんの衣装と、ふんわり寝間着姿は必見です
時代物の衣装がほんとお似合いで
全体的に衣装が豪華で、さすが宮廷物です。ドレスはもちろん、男性の衣装、特に国王の衣装は素晴らしいです。
 
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権謀術数に長けた叔父ノーフォーク公、叔父に言われるがままの父親によって、アンは国王に近づかされますが、思いがけず気に入られたのはメアリーの方でした。
なすすべもなく、メアリーを差し出すことに泣く泣く同意するウィリアム…
日本でもこういう時期はあったわけで、そんな時代に生まれなくて良かった、と思います。
ウィリアムは宮廷に出仕することになりますが、そのうち仕事を口実に追い払われてしまいます。それっきり出てきません><
 
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メアリーは国王に大切にされて、彼を愛するように。そして初めての子供を妊娠します。
一方アンはヘンリー・パーシーと極秘に結婚しますが、相手には婚約者がいたため、メアリーは心配して父親に知らせ、アンはフランス王妃の元に送られてしまいます。
アンは、国王の寵愛を得た上、告げ口をしたと思いこんでメアリーのことを恨むようになり、姉妹の間には亀裂が…。

ヘンリー8世、とにかく飽きっぽいというか、手に入ったら次の女性って感じなんですよね。メアリーが切迫流産で寝込んでいる間にアンが接近したら、すぐに目移りするとか最低です。自分の子供を産んでくれる女性に対して敬意はないのか、って思います。
メアリーの子供は男の子で、王子になるはずだったのに、そのまま見捨てられてしまうのです。
「大奥」とかを観ると、世継ぎを産ませるために将軍も大変、って思うのですが、この映画では苦労してるのは女性ばかりって気がしますね…。
 
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でも、ブーリン家に仕えているウィリアム・スタッフォード(エディ・レッドメイン)がメアリーを陰で支えます。
エディ君、馬に乗るシーンがあってなかなか颯爽としてかっこいいです。
 
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アンは、すぐには王を受け入れず、まず王妃を追い落として、その座に自分が座ろうと画策します。
そのせいで、国王は何の落ち度もない王妃と離婚し、カトリック教会とも決別へ。そんなにまでして手に入れたアンなのに、結婚したらすぐにジェーン・シーモアとつきあい始めます。この女性、アンの死後、国王と結婚して、エドワード6世を産むんですね。
結局、国王にとって女性は狩りのように征服するもので、愛する気持ちを知らずにいるのでしょう。

アンは女の子を産みますが、男の子に恵まれず、あせった彼女はなんと、弟のジョージと関係をもって子供をもうけようとしますが…
史実としては、アンの政敵に当たる人間が流した嘘の醜聞らしいのですが、映画では、ジョージが「どうしてもできない」と言って諦めるという展開になっています。
ジョージの妻がその現場を見ていたために、アンは窮地に立たされます。
この後の悲劇的な展開は史実の通りです。巻き込まれたジョージがかわいそうで><
 
アンはメアリーにかなりひどいことをしてるんですが、驚くのは姉妹の絆が切れないことです。メアリーが寛容だということもあるかも知れませんが、小さい頃から仲の良かった二人、アンも本当は妹を愛していたのですね。

メアリーがスタッフォードと結婚して幸せに暮らしたこと、メアリーが引き取って育てたアンの娘エリザベスがのちのエリザベス1世になったことは明るい要素です。
アンは男子のことしか考えていませんでしたが、結局は女子が継ぐことになったというのは皮肉なものです。

アンの末路は、自分が招いたことでもあるのですが、女性を政略結婚の道具にしようという貴族社会の犠牲になったとも言えます。
ブーリン姉妹が今でもこうして注目を集めるのは、彼女たちの悲劇が必ずしも過去の物とは言えない、今の世界だからではないでしょうか。