それでも夜は明ける  監督 スティーヴ・マックィーン

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1841年に、ワシントンで誘拐され、12年もの間、ルイジアナプランテーションで奴隷として働かされた、ソロモン・ノーサップを描いた作品です。(実話です)
第86回のアカデミー賞作品賞助演女優賞ルピタ・ニョンゴ)、脚色賞を受賞しました。
ネタバレありますのでご注意下さい

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ソロモン(キウェテル・イジョフォー)は自由証明書を持った自由黒人で、妻と子供二人とともに幸せに暮らしていました。バイオリンの演奏に長けた彼はイベントに招かれたあと、騙されて奴隷として南部に連れて行かれてしまいます。
名前も取り上げられ、プラットと呼ばれることに…。

始めに彼を買ったのはフォード(ベネさん)で、彼は聖職者で温和な性格であり、ソロモンにもバイオリンをプレゼントするなど優しく接します。

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でも、奴隷市で売られていた女性が、子供と一緒にと懇願したのに、奴隷商人の口上を退けるほど強くはないフォードは、ソロモンと母親だけを引き取っていました。
奴隷をひどく扱うことはしないけれど、奴隷がいないと不便…と思っている事なかれ主義がことあるごとに見え隠れするんですよね。
結局、農園の監督官とトラブルを起こしたソロモンを、非情だと分かっているエップス(マイケル・ファスベンダー)に売り渡してしまいます。
役柄としては微妙だったけど、薔薇のアーチの下で説話をする姿が素敵でした^^
ふわりとカールした前髪、リボンタイがお似合いです

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エップスは、綿花の収穫量が少ない奴隷に、罰として鞭打ちを行うような男でした。しかも、最も有能な女性パッツィ(ルピタ・ニョンゴ)を無理やり愛人にしていました。
ファスの演技は初めて観たのですが、ハンサムだし目立ちますね~。しかも、ソロモンと追いかけっこして泥と○○?に滑って転ぶし、柵を跳び越えようとして引っかかるし、ドジなシーンもがんばってます^^;
パッツィに鞭を打つのをソロモンにやらせたりして、ほんっと嫌なヤツなんですが、きっと自分に自信がなくて、人を低く見る事で何とか体面を保ってるって感じなんでしょうね。
そういう嫌なヤツを思いっきり演じきってるのがすごいです。

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ソロモンが、実際は教養があるにも関わらず、目をつけられるのを防ぐために隠さなければならないこと、筆記用具もないため、桑の実の汁や物を燃やした後の炭を使って必死で手紙を書くところ、切ないです><

悲惨な毎日の中、ソロモンは、あずまやを建てるために呼ばれた大工のバス(ブラッド・ピット)と出会います。彼は四民平等の考えを持ち、ソロモンの前でエップスにもそう語りかけます。
ソロモンは彼に一縷の望みを託して、自由証明書を手紙で取り寄せてくれるよう頼みます。
ブラピはプロデューサーとして参加してるのですが、さりげなく印象的な役で出てますね。

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イタリア版のポスターがブラピとファスをアップにして、イジョフォーを隅に配置したデザインで物議を醸したのは私も記憶にあります。
人種差別撤廃をテーマにした映画の宣伝で人種差別をしてるっていうのは何なんでしょうね。ポスターは回収されたようですが…。
ソロモンに迎えが来るところ、エップスが相手にされず、胸がスカッとします^^

ラストシーン、家族との再会には感動しました。でも12年も経ってるので、子供達は成人して、孫までいて…失った年月の大きさを感じさせられます。

ルピタちゃんはもちろん熱演でしたが、やはりイジョフォーの演技、素晴らしかったです。長い間無言で、表情だけで演技をするというシーン、けっこうあったように思いますが、ソロモンのやり切れない心情が伝わってくるんですよね。
この回のアカデミー主演男優賞はマシュー・マコノヒー(ダラス・バイヤーズ・クラブ)なので、仕方ないとは思いますが、賞をとってもおかしくない名演技でした。事実、たくさんの演技賞をもらってはいるのですが。

時間を忘れて見入ってしまう、素晴らしい映画でした。
日本版のタイトル…つらい日々が続いても、きっと明るい夜明けはやって来る、という意味でしょうか。いいタイトルです。

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アカデミー作品賞を受賞して、喜びのあまり飛び上がる監督と、それを見てさらに盛り上がる出演者たち。ベネさんもいい笑顔です^^