スモール・アイランド  監督  ジョン・アレクサンダー

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前から観ようと思っていたこの作品、やっと観ることができました。こんなに良い作品だったとは…もっと早く観れば良かったです。
完全ネタバレですので、未見の方はご注意下さい。

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ジャマイカ人のホーテンス(ナオミ・ハリス)は若い頃、引き取られた家の息子のマイケル(アシュリー・ウォルターズ)に恋をしていましたが、彼が好きだったのは、ホーテンスの同僚の教師でした。
ホーテンスは恋を諦め、まだ見ぬ英国に渡るために、友達の元彼のギルバート(デヴィッド・オイェロウ)に偽装結婚を頼んで英国に呼び寄せてもらうことにします。
「スモール・アイランド」というのはジャマイカのことで、ここでの生活を見切って新天地を目指す人々の気持ちを表したものなのでしょう。

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一方、ロンドンに住むクイーニーは、実直な男バーナード(ベネさん)の熱意にほだされて結婚しますが、戦争が始まり、彼は出征してしまいます。彼には戦争神経症の父親がいて、クイーニーは父親の世話をしながら夫の帰りを待ちます。しかし、帰還したはずのバーナードは行方不明に。
そんな時出会ったのが何とマイケルでした。惹かれあった2人は一夜を共にしますが、マイケルは去って行きます。

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ギルバートは下宿屋を始めたクイーニーの所に友人とともに下宿し、約束通りホーテンスを呼び寄せます。しかし英国でも教職を目指し、プライドの高い彼女はギルバートを夫として受け入れません。それでも我慢して、床やソファで寝るギルバートが泣けます><
ホーテンスがめちゃ料理が下手で、職場でイヤな目にあって帰って来たギルバートがブチ切れるというエピソードがあるのですが、これが後の方でも生かされていて、クスッと笑わせてくれます。

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       激マズ料理を前に沈黙のギルバート(笑)

仕事も住むところもなかなか見つからず、ようやく見つけた職場でいじめられたり、映画館で別の列に並べと言われたり…英国に夢と憧れをもってやって来た2人に黒人への差別がのしかかります。ギルバートは法律を学びたかったくらいで、きっと優秀だったのでしょうが、望んだこともできないのが見ていてつらいです。
しかも、映画館での諍いに巻きこまれ、流れ弾に当たってバーナードの父は亡くなってしまうのです。

ある日再びマイケルがクイーニーを訪れ、2人は数日を過ごします。カナダに行くというマイケルに、クイーニーは誘ってもらうことを期待しますが、彼からとうとうその言葉は出ませんでした。再び去って行くマイケル。
彼と二度と会うことはありませんでしたが、彼女のお腹には彼の赤ちゃんが…。

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ある日、失踪したバーナードが不意に帰って来ます。クイーニーは彼への不信をあらわにしますが、実はバーナードは無理に連れて行かれた娼館で梅毒にかかったと思い込み、それが間違いと明らかになって帰って来たのです。
クイーニーを愛する気持ちは変わらないバーナードですが、黒人が下宿していると知って嫌悪感を隠さず、ギルバート達に出ていくように言います。

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しかし、そんな時出産したクイーニーの子供は黒い肌でした。当然ギルバートが父親だと、バーナードからもホーテンスからも疑われてヒドイ目に遭います^^;
彼女から、マイケルのことを聞き、自分に責任があると感じたバーナードは、子供を受け入れ、父親になると告げます。
バーナードはその当時の英国人としてはごく標準的な意識の持ち主だと思うのですが、だからこそ、この決意ってすごいですよね。黒人への嫌悪はどうしても払拭できないんだけど、クイーニーへの愛が全てにまさっていて、彼女のために父親になろうとするんですね。
赤ちゃんの側に行ってお腹をこちょこちょってするところ、子供の父親としてがんばろうって思って近寄ったけど、赤ちゃんの可愛らしさに思いがけず穏やかな表情になった、って感じなのかなって思いました。
でも、後でクイーニーが言うように、きっと将来無理が出てきてしまう事が予感できてしまうのが切ないです。

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ギルバートは、家族が資産を売って手にした大金で2つも家を買った友達から、その1つをプレゼントしてもらうという幸運を手にします。ホーテンスの憧れだった、呼び鈴があって各部屋に明かりのある家がついに実現するのです。
幸せになった2人はようやく本当の夫婦になります。ギルバート、よくここまで我慢しましたね…。
とにかくギルバートがいい人過ぎて><何て素敵なダンナさんなんでしょう。ホーテンスが教職につけなくてショックを受けてる時にかける優しい言葉だとか、ほんとに心が温かくなりました。ホーテンスはけっこう難しい女性だと思うけれど、ギルバートがいてくれてほんとに良かったです。

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クイーニーは子供の幸せを思い、ホーテンスとギルバートに育ててもらう決心をします。一度は断ったギルバートですが、ホーテンスはクイーニーの母親としての思いを感じ取って子供を引き取ることにします。
子供を抱いて去って行く2人を見送りながら泣き崩れるクイーニーを、優しくバーナードが抱き寄せます。

そして現在。すでに老年になったクイーニーの息子は、アルバムを見ながら孫達に話をしています。ホーテンスが英国で学位を取り直して教師になったことが写真から分かります。最後に示したのがクイーニーの写真でした。彼はホーテンス達から本当の母親のことを教えてもらっていたんですね。幸せな人生を送ってきたことが分かり、温かい雰囲気の中、ドラマは終わります。

このドラマは、奇しくも同じ男性を愛したクイーニーとホーテンスが、自分の生きる道を見つけていくというのがテーマなのですが、2人の演技、とても輝いていました。
でも、2人を取り巻く男性達も素晴らしかった^^ 彼らがいてこそ、女性達のドラマもよりドラマティックになったんだなと思います。
すごく細かい所まで意識して作られているドラマだと思いました。「パレーズ・エンド」も良かったけど、これも同じくらい素敵なドラマでした。