僕が星になるまえに  監督 ハッティー・ダルトン

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末期ガンに冒され、余命わずかな青年ジェームズ(ベネさん)と、親友デイヴィー(トム・バーク)、ビル(アダム・ロバートソン)、マイルズ(JJ・フィールド)の4人が、ジェームズの一番お気に入りの場所、バラファンドル湾を目指して旅をするロードムービーです。
完全ネタバレですのでご注意を。
 
 
 

 
 
 
男ばかりのロードムービーってことで、大学生的なノリでふざけあったり、祭りに乗り込んで地元民とケンカしたりして(ジェームズもカートで突進!)にぎやかなんですが、どこかに影を背負っての明るさというか…みんな明るく振る舞おうとがんばっているのが感じられて切ないです。

旅をして行くうちに、お互いの本音が出てきて口論になることも。
「何を言っても、5分経てば許し合えた」
っていいですね。男の友情って感じがします。

みんなそれぞれ自分の人生に悩みを抱えているのですが、それをジェームズが辛辣な口調で口にしてしまって。
その時のマイルズが、ジェームズのことを特別扱いせず、こちらも歯に衣着せぬ言い方で応酬するのが驚きです。でも、そのうちにジェームズがニコッとして(この笑顔がかわいい)マイルズも最後には笑って…。
この時の二人を思うと、あとのマイルズの決断がなおさらつらいのです;;
  
ジェームズを運ぶためのカートが崖から落ちてからは、ジェームズも無理をして病状が悪化してしまい…。それで肩を貸したり、おんぶしたりしながら海を目指す仲間たちの姿が愛おしいです。
でもこの辺りから、彼らを覆っている影がさらに色濃くなって来るような気がします。
 
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実はジェームズの目的は、自分の好きな場所で死を選ぶことでした。苦しくても最後まで自分の力で泳いでいくこと、それは思うように人生を生きられなかったジェームズの、最後の強い望みだったのですね。
もちろんそれは彼らには受け入れられず…最後まで生きてほしいと願います。

途中でモルヒネを落としたせいで、苦しむジェームズの姿をみんなは目の当たりにします。探しに行って事なきを得るのですが、この事がジェームズの願いを叶えようとする引き金になるという展開が切ないです。
沖に向かって泳ぐジェームズを見送りますが、いたたまれなくなって追い始めます。助けようとするデイヴィーとビル。ジェームズの思いを汲んで、死を見守るマイルズ。
友達の死を背負うという苦しみを進んで受け入れようとするマイルズに胸が痛くなりました。

自分はどうしても家族としての立場に立ってしまうので、デイヴィーの「連れて帰ると約束した」というのが気になってしまうのです。ジェームズの家族は、あとでどんなに悲しむだろうと思って…。
自分の生き方を決めるのと同じように、自分の死を決める権利もあるのかも知れませんが、やはり人間は1人だけで生きているのではない、と考えると、ジェームズの行動には賛成しづらくて。
友達に自分の死を見届ける重荷を背負わせるということも、どこまで考えていたのだろう…と思うのです。
でも、死を前にしたジェームズの苦しみを思うと、どうしていいのか頭の中がぐるぐるになってしまいます。仲間たちも、きっと同じように迷っていただろうな…と思います。

この映画、風景が本当に美しくて。儚げなジェームズの姿と相まって、涙が出てしまいます。途中で何度も出てくる、海岸に佇むジェームズの姿。彼の心象風景だったのですね。

ベネさんはこの映画のために体重を落としたのでしょうね。おんぶされたりお姫様抱っこされたりする姿も自然です。
改めて思うのは、ほんとにベネさんは上手い役者さんだなと。そこにいるのは、他の誰でもない、ジェームズなんですね。観ていると、愛らしい笑顔に、その悲しみや涙に、胸が苦しくなるほど惹きつけられてしまうのです。
 
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原題の「Third Star」は、「ピーターパン」でネバーランドを目指すための目印になる星で、本当は2番目の星なのだとか。すぐにツッコミが入るくらい、誰もが知っていることなんですね~。ジェームズは、3番目の星になったんですね、きっと。

観終わった時には、「ああ、これで終わりなのか…」と呆然としてしまいましたが、1日たった今でも、ふと気づくとこの映画のことを考えている自分がいます。
生きるということについて、考える機会を与えてくれた映画になりました。