つぐない  監督 ジョー・ライト

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イアン・マキューアンの小説「贖罪」を映画化したものです。
GG賞の作品賞と作曲賞受賞、アカデミー賞7部門ノミネートで、作曲賞受賞という、評価の高い作品です。
ネタバレありますのでご注意下さい

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官僚の娘セシーリア・タリス(キーラ・ナイトレイ)は、使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)と愛し合う仲でした。
セシーリアの妹ブライオニーは、小説家をめざす多感な少女です。ロビーにほのかな恋心を抱いています。

庭でセシーリアがロビーの前で服を脱いだところ(池に落ちた花瓶のかけらを拾いに行っただけ)や、卑猥な内容の手紙(ロビーが入れ間違えた)、図書室での逢い引きなど、ブライオニーは間が悪いところばかり見てしまうんですね。
そういう大人の関係に嫌悪感を抱く年頃でもあり…二人への嫉妬心もあって、ロビーへの感情は複雑に。

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一方、タリス家には、いとこのローズとその双子の弟、そしてタリス家の長男リーオンの友人であるポール(ベネさん)が滞在する事になります。
ポールはチョコレート会社の御曹司、つまりチョコバッチです(違

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セシーリア、ポール、リーオンの3人の水着シーン、キーラがベネさんに、
「私たち、精子みたいだったわ」
って言って、笑わせてましたっけ(笑)

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ある夜、双子が行方不明になり、その捜索をしている間に、ローズがレイプされる事件が起こります。
目撃したブライオニーは、違うと知っていながらロビーを犯人として告発し、ロビーは逮捕されてしまいます。そして減刑と引き替えに戦地へと送られることに…。

13才のブライオニーには、それがどんな重い結果を招くのか予想できなかったんですね。でも、成長するにつれて、自分がした事の重大さに気づきます。
その結果彼女は大学に行く事を諦めて看護師になり、戦争で怪我をした兵士の治療に当たります。戦地にいるロビーのことを思いながら…。
その頃ロビーは、海岸にたどり着き、同胞たちと一緒に帰国の船が来るのを待ちます。
戦地でのシーンが思った以上に多いです。「パレーズ・エンド」でもそうでしたが、イギリスでも戦争の記憶というのは大きな爪痕を残しているのだな…と思いました。

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ポールとローズの結婚式に参列したブライオニーの脳裏に、記憶の奥に押し込めていた真犯人の顔…ポールの顔が浮かび上がります。
つまりローズは自分をレイプした相手と結婚したわけです。顔を見ていないので、それを知らないのでしょう。
許せんチョコバッチ…(だから違)

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ブライオニーは思い切って、セシーリアのもとを訪ねます。そこには帰国したロビーの姿も。心を込めて謝りますが、ロビーから責められ、真実を明らかにすることを約束して部屋を後にします。

実は私、一度うっかり最後の方を再生しちゃって、セシーリアとロビーが楽しそうに浜辺にいたので、きっと二人は幸せになったんだな…と思ったらそうじゃありませんでした;;

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セシーリアを訪ねたシーンは、小説家として成功したブライオニーが書いた小説のワンシーンだったのです。
実際のロビーは、帰国の船が来る直前に敗血症で亡くなり、戦地から戻る事はありませんでした。セシーリアは地下鉄の駅に避難していた時に、大量の水が流れ込んできて亡くなりました。二人は入隊直前に会ったのを最後に、二度と会う事はなかったのです。

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確かに、ロビーがひどくブライオニーを責めた事は、ロビーらしくないと思ったんです。
それは、彼女が自分自身を責める言葉だったのですね。
そして彼女自身も病に冒され、死を待つばかりに…彼女の絶筆は、最後の贖罪だったのです。
もしかしたら、ブライオニーのついた嘘がなくてもロビーは出征していたかも知れませんが、二人が離ればなれになるきっかけを作ってしまったという苦しみを、ずっと背負って生きた彼女の人生が悲しいです。

戦地でロビーが書いた、「セシーリア、再開できるかもしれない。かつての僕の計画を。正装し、希望をもって屋敷の道を歩いた、かつての僕に戻れるのだ」という手紙が切なくて;;
彼女と二人で行こうと約束していた、ラストシーンに出てくる白い崖、セブンシスターズという場所だそうです。パレーズ・エンドや、ミスター・ホームズの予告にも出てきていました。すばらしく美しい場所ですね。

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悲しい物語ではありますが、一人一人の心情を丁寧に描いていて、しみじみと胸に残る映画でした。